『モテたい理由』 (赤坂真理)

モテたい理由 (講談社現代新書)

モテたい理由 (講談社現代新書)

「ねえママ、私、恋愛できなかったらどうしよう?」
著者の友人の十四歳の娘は、ティーンになったばかりのときに言ったという。

「モテ」!!!! すなわち、他者(主に異性)との関係性において優位に立つこと。

経済原理という神が、「モテ」を一大ビジネスにした。
女も男もそれに逆らえない同調圧力ができあがりつつある。

「モテ」の現象を鋭く、切り取ってくれたのが何より面白い。


■小難しい「モテ」の物語……

敗戦で、日本は戦争や天皇という"目的"を失いました。
それではさびしいので、「代わりの物語」として、新たな"目的"が作られました。
それは、お金です。
日本は極端な物質中心主義になりました。
経済こそが「神」になりました。

さて、20世紀も終わりに近づいて、男性原理に限界が見えだしました。
男性自身にも、フリーターやオタクのように、競争社会から降りる生き方がでてきました。
「女性らしさ」も、もてはやされました。

二つのマイノリティ、「オタク」と「女性」。
市場は、「オタク」よりも、「女性(恋愛)」を選びました。
「女性(恋愛)」のほうが万人受けして、みんなにお金を使わせることができるからです。

もともと女性にあった、「人目を気にする」「他人との関係性に敏感」という性質に、
「モテ」という言葉が当てられました。

女性誌は、若い娘たちに「恋愛至上主義」の強迫観念をうえつけて、消費をあおりました。
男にも『LEON』のように、「女にモテなきゃ意味がないんだよ!」とはっきり言う雑誌があらわれました。

今では、男も仕事ができるだけではだめです。
「男は金を稼いで当たり前。そのうえ、関係能力も高くなくては」
女だって追いつめられます。
「仕事ができても、キレイじゃなきゃダメなんです、女子は!」

世の中全体がメス化した結果、都内の新名所は全部ショッピング・モールになりました。

「女性」は、消費の最後のフロンティア。
だから、雑誌も、広告も、不動産デベロッパーも、必死でそれを追いかけます。
フロンティアが食い尽くされた後に何が残るのか、誰にも分かりません。
………。