『資本主義崩壊の首謀者たち』感想3

株でも何でも、投機の対象になるようなものの価格が上がったり下がったりするのは、庶民が、企業価値や未来の需給などを読み間違えたから、ではない。少なくとも、それだけではない。
http://d.hatena.ne.jp/mln244/20090713


2003年から日本では株価が上昇し始めたが、それは、「国際金融マフィアが日本を舞台に利益をあげるため、いつか引き上げる外国資金が一時的に入っただけ」(p.227)だという。だから、2003年の東証の外国人投資家の買い越し額は、8兆円を超えていた(2003年3月の東証時価総額は221兆円)。2003年から、「景気が良くなってきた」と言われても、一部の錬金術マジックを使った経営者以外の一般人にほとんど実感が湧かなかったのは、それが「外国製のバブル」にすぎなかったから。

そして、2007年2月に東証時価総額は581兆円をピークとして、2008年10月までに半分以下の239兆円になった。時を同じくして、外国人投資家の売り越しが跳ね上がって、2007年から数兆円になった。

株などをやっている人で、「値段が下がって、損をしたのは自分の責任だ」と思っている人は多いと思う。
でも、そうじゃない。のかもしれない。もっと怒っていいのかもしれない。というのがこの本を読んで思ったことだ。

暴落の最初の頃に売ることができた人は、莫大な儲けを手にした。「売り逃げ」は、「持ち逃げ」でもある。一部の市場の価格を操作できる人、真相を知ることができる人が、その他大勢の人(日本人)が少しずつ投資したお金を持って逃げた、ということ。

「日本の株価は、すべて外国人投資家の思いのままに動かされ、株価暴落のたびに、莫大な日本人の金が国際金融マフィアとウォール街に盗まれてきました。」(p.229)

自分は投資なんてしていないから(あるいはしていても少額だから、少しは勝っているから)関係ない、という人もいるかもしれない。
でも、そんなことはない。

サラリーマンなら毎月天引きされている厚生年金が、どのように運用されていたのか、それがこんな「売り逃げ」にあって(もう実際にそんな目にあってるけど)、親の年金が1/2に、自分の年金が0になったら、それでも関係ないと言えるのかな?
ちなみに、公務員の共済年金アメリカには貢いでおらず、日本国債などで堅実に運用されているという噂もある。もし本当だったらサラリーマンは誰も許さないと思うんだけど。

「日本人は金融に向いてない」とジョージ・ソロスは書いている。ウォール街では、最後に日本人に売りつければいい、と言われるともいう。
結構。金融に弱くてもいい。
日本人は他に得意なことがあって、それで価値あるものをもたらし、その対価としてのお金(貿易黒字)と尊敬を、世界から集めてきたんだから。だから、そうやって稼いだお金は、アメリカのためではなく日本のために使って欲しい。

資本主義崩壊の首謀者たち (集英社新書)

もっとも、この著者と反対意見の人の本も読まないと、バランスが取れなくて、判断が偏ってしまいそうな気もする(これは勝間さんの本に書いてあったこと。違う意見の本を最低三冊、というもの)。「アメリカ国債をもっとどんどん買おうよ! アメリカは必ず復活するからさ!」みたいな本がいいのかな(笑)。ちょっと探してみようか。